RTX 5070が発売されたのは2025年3月5日。それから約1年半が経過した。
発売当初は、ドライバーの成熟やDLSS 4対応ゲームの増加によって、評価が変わる可能性も残されていた。
しかし、2026年8月まで市場で売られ続けた結果、答えはほぼ出た。
RTX 5070は、性能が低すぎて使えないGPUではない。DLSS 4のマルチフレーム生成、FP4、H.264/HEVCの4:2:2処理など、Blackwell世代の新機能は間違いなく優秀だ。
それでも駄作だった。
Blackwellの優秀な機能を、前世代からほとんど伸びない基本性能とVRAM 12GBへ押し込み、コストカットによって自ら使い切れなくしたからである。
RTX 4070 SUPERと大差ないのに、30W多く要求する
| GPU | CUDAコア | VRAM | 帯域 | TGP | NVENC |
|---|---|---|---|---|---|
| RTX 4070 SUPER | 7,168 | 12GB | 504GB/s | 220W | 第8世代×1 |
| RTX 4070 Ti | 7,680 | 12GB | 504GB/s | 285W | 第8世代×2 |
| RTX 5070 | 6,144 | 12GB | 672GB/s | 250W | 第9世代×1 |
RTX 5070の通常描画性能は、タイトルによってRTX 4070 SUPERを上回るものの、ほぼ同等にとどまるゲームも多い。RTX 4070 Tiと並ぶ場面はあっても、世代交代として明確に超えたとは言いにくい。
それでいてTGPは、RTX 4070 SUPERの220Wから250Wへ増加した。実測でも、RTX 5070はGPU単体の消費電力がRTX 4070 SUPERを40W以上上回る場面が確認されている。
ゲームによって電力効率は変わるため、Blackwell全体がAdaより非効率とは言えない。
だが、同程度のラスター性能を出すために、電力上限を30W増やしたという事実は残る。
MFGを使えば表示フレームレートは大幅に上がる。しかし、生成フレームは基本性能やVRAM不足を消す魔法ではない。
MFGを使わなければ世代交代を感じにくい時点で、基礎体力の伸びは失敗している。
同じTSMC 4Nで、性能ではなく原価を削った
RTX 4070 SUPERのAdaも、RTX 5070のBlackwellも、製造プロセスは同じTSMC 4Nである。今回は大幅な微細化によって、同じ面積へ大量の回路を詰め込めた世代ではない。
さらに、GB205のフル構成は50SM、6,400 CUDAコアだが、RTX 5070では48SM、6,144コアだけが有効化されている。
RTX 4070 SUPERの7,168コアと単純比較はできないものの、Blackwell側の設計改善とGDDR7による帯域増加を使って、少ない演算器で前世代並みの性能を維持した構成である。
技術的には効率化だ。
しかし、その効率化が購入者の為の性能向上ではなく、GPUを小さく安く作る方向へ使われたのなら話は別である。
Blackwellが稼いだ余裕を、NVIDIAが製品性能ではなく利益率向上のために使った。
RTX 5070の微妙さは、ここから始まっている。
動画機能は進化したが、3年前のRTX 4070 Tiに負ける
第9世代NVENCは、H.264とHEVCの4:2:2エンコードへ対応し、AV1とHEVCの画質も改善した。第6世代NVDECも4:2:2をデコードできる。対応カメラの10bit素材を扱う人にとっては、文句なしの進化である。
ただし、RTX 5070のNVENCは1基しかない。
無印RTX 4070やRTX 4070 SUPERも1基だったため、70番台としては従来通りとも言える。
しかし、実際のゲーム性能が近いRTX 4070 Tiは、2023年の製品でありながらNVENCを2基搭載していた。
4:2:2素材を扱うならRTX 5070が圧倒的に有利だ。
一方、一般的な4:2:0のAV1やHEVCを、複数NVENCへ対応したソフトで書き出す場合、RTX 4070 Tiが速くなる可能性がある。
新形式では進化したが、エンジンの物量では3年前の同性能帯GPUに負けている。
4:2:2を使わない動画編集者にとっては、Blackwellの進化がNVENC削減で相殺されかねない。
FP4を積んだのに、12GBではAIを伸ばせない
BlackwellのFP4は、AIモデルの容量と推論負荷を大幅に減らす。NVIDIAによれば、FP16で23GB以上必要だったFLUX.1-devも、FP4なら10GB未満まで圧縮できる。
12GBでも画像生成や7Bから14B級のLLMは十分に動く。RTX 5070でAIが何もできないわけではない。
しかし、20B級のDenseモデルを4bitで扱えば、重みだけで単純計算約10GBを使う。実際には量子化情報、作業領域、KVキャッシュも必要だ。
モデルを読み込んだだけでVRAMがほぼ埋まり、長い文脈を扱えばすぐに限界へ達する。
FP4の価値を本格的に生かすなら、最低でも16GBは欲しかった。
高速なAI演算器を搭載しながら、データを置く器を削った。RTX 5070の最も惜しい部分である。
12GBのGDDR7より、16GBの余裕が必要だった
RTX 5070は28GbpsのGDDR7を192bitで接続し、672GB/sの帯域を確保している。
しかし、256bitのGDDR6を20Gbpsで動かしても640GB/s、21Gbpsなら672GB/sへ届く。
256bit化にはメモリコントローラーや基板配線、チップ数の増加が必要であり、無料ではない。
だからこそ、12GBは技術的限界ではなく商品設計の選択だった。
NVIDIAは16GBの実用性より、192bit構成によるコスト削減を優先したのである。
性能が上回るRX 9070 XTの方が安いという致命傷
2026年8月10日時点の最安値では、RTX 5070が10万8,8799円、RX 9070が9万4,880円、RX 9070 XTが9万9,800円だった。
RTX 5070より安く、16GBのVRAMと高いラスター性能を持つRX 9070 XTが買える。
レイトレーシングではRTX 5070が常勝するわけでもなく、通常のRTではゲームによってRX 9070が上回る。重いパストレーシング、CUDA、DLSS、4:2:2処理が必要ならGeForceを選ぶ理由はあるが、一般的なゲーム用途では苦しい。
RTX 5070 SUPERの噂が欠点を証明した
RTX 5070 SUPERは、6,400 CUDAコア、18GB GDDR7、275Wになると噂されている。
コア増加は約4%にすぎず、最大の変更は12GBから18GBへの増量だ。つまり、通常版RTX 5070に本当に足りなかったものが容量だったと、自ら答え合わせしているような仕様である。
ところが、高価な3GB GDDR7の影響で、完成したGPUがボードメーカーへ届いていても発売を止められているとの報道まで出ている。3GB品は2GB品の約3倍ともされるが、NVIDIA未発表の情報なので噂として扱う必要がある。
もっと早く出せばよかった。
いや、本来はSUPERなど必要なかった。
2025年3月の時点で、RTX 5070を16GB以上にしておけばよかったのである。
あと少しリッチなら名機になれた
Blackwellそのものは優秀だ。
DLSS 4、FP4、新世代NVENC、4:2:2対応。素材は一級品だった。
しかしNVIDIAは、前世代と同じ製造プロセスの中でコアとメモリを切り詰め、12GBへ押し込んだ。
その結果、RTX 4070 SUPERと大差ない性能なのに消費電力は増え、動画では用途によってRTX 4070 Tiに負け、AIではVRAMがFP4の足を引っ張った。
発売から約1年半たった今だからこそ、確信を持って言える。
RTX 5070は、Blackwellの未来を体現した名機ではない。
優秀なBlackwellの才能を、中途半端なコストカットで使い切れなくした駄作だったのである。
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