Claude Codeが、HP製ノートPCのBIOSを解析し、通常は表示されない55項目の設定を解放した。
2026年8月3日、RedditユーザーのReddit_2049氏は、AnthropicのAIエージェント「Claude Code」を使ってBIOSを改造した過程を公開した。
海外では「AIがRSA-2048署名を突破した」と報じられているが、RSA-2048という暗号そのものを破ったわけではない。
それでも今回の事例は重要だ。
これまで一部の専門家にしかできなかったBIOS解析を、AIエージェントが支援できることを実機で示したからである。
Claude CodeがHPノートのBIOSを解析
対象となったのは、第10世代Intel Coreを搭載するHP 15-dw1036neのBIOS F.68である。
投稿者がBIOSを書き換えると、PCは改造を検知し、「BIOS Corruption Detected」と表示して起動を拒否した。
そこで投稿者は、BIOSチップから読み出したデータと解析ツールをClaude Codeに渡した。
Claude Codeは、BIOS内部のプログラムを調査し、次の3つのパッチを作成したという。
| パッチ | 内容 |
|---|---|
| 改造検知の回避 | 書き換えたBIOSでも起動できるようにする |
| 隠し設定の解放 | 非表示だった55項目を表示する |
| メニューの解放 | Advanced、Power、Debug、Bootタブを表示する |
さらに、BIOSのバックアップとパッチ適用を行うPythonスクリプトも公開された。
RSA-2048を解読したわけではない
HPのBIOSには、メーカーが作った正規のファームウェアかどうかを確認する電子署名が使われている。
BIOSが書き換えられると署名が一致しなくなり、PCは改造されたと判断して起動を止める。
Claude Codeが行ったのは、この署名を偽造することではない。
BIOSは改造を正しく検知していたが、その後の「異常なので起動を止める」という処理を書き換え、起動を続けるようにした。
たとえるなら、鍵を解読したのではなく、警報が鳴っても扉を閉じないよう制御装置を変更した形である。
そのため、RSA-2048の安全性が破られたわけではない。
パスワード付き中古PCを復活させた話でもない
今回の「BIOSロック解除」は、BIOSパスワードを消したという意味ではない。
元のReddit投稿には、電源投入時パスワードや管理者パスワードが設定されていたという記述がない。
ここでいう「解除」とは、メーカーが隠していた設定画面を表示し、改造BIOSでも起動できるようにしたことを指す。
したがって、このスクリプトを使えば、パスワード付きの中古PCを簡単に使えるようになるわけではない。
BitLockerで暗号化されたSSDのデータを読めるようになるわけでもなく、盗難PCの保護が無意味になったわけでもない。
本当にすごいのはAIが解析を手伝ったこと
BIOS改造には、これまで高度な専門知識が必要だった。
BIOSデータを読み出し、内部のプログラムを分解し、何千、何万行もの解析結果から、改造を検知している処理を探す必要がある。
今回も、人間がPCを分解し、BIOSを読み出し、解析ツールを用意し、実機への書き込みと動作確認を行っている。
Claude Codeが完全自動でノートPCを改造したわけではない。
それでもClaude Codeは、複数の解析結果を読み、変更すべき場所を見つけ、パッチと自動化スクリプトを作った。
ここが大きい。
従来はファームウェア解析の専門家が長時間かけて行っていた調査を、AIエージェントが強力に補助できるようになったのである。
隠し設定を出しても性能が上がるとは限らない
解放された55項目が、すべて正常に使えるとは限らない。
メーカーは、複数のPCで同じBIOSを共用することがある。そのため、設定画面だけ存在していても、その機種では対応する機能や回路が搭載されていない場合がある。
設定を変更しても何も起きない可能性がある一方、起動不能、発熱、電源管理の異常につながる危険もある。
今回のパッチも、HP 15-dw1036neのBIOS F.68専用である。他機種でそのまま使える保証はない。
AIが壊したのは「専門家にしかできない」という壁
Claude CodeはRSA-2048を破っていない。
BIOSパスワードを解除したわけでもなく、遠隔から他人のPCへ侵入した事例でもない。
それでも、今回の報告がPC業界に与える意味は大きい。
これまでメーカーは、BIOS内部へ設定や機能を隠しておけば、それを解析できる人間はほとんどいないと考えられた。
しかし、AIエージェントが解析作業を支援すれば、その前提は崩れる。
Claude Codeが解除したのは、1台のノートPCに掛けられた暗号ではない。
「BIOS改造は一部の専門家にしかできない」という、技術のロックそのものである。
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