PCパーツ界隈では、「Core Ultra 200S(Arrow Lake)」の登場以降、「ついにIntelも省電力になった」「爆熱から解放された」と持て囃されている。

たしかに、自社の前世代(第13・14世代)と比較すれば消費電力は劇的に低下した。しかし、ハードウェアの進化をフラットな目線で比較すると、極めて不都合な事実が浮かび上がる。それは、2019年にAMDがチップレット設計の「Zen 2」を投入して以来、Intelはただの一度も、高負荷時の根本的なワットパフォーマンス(電力効率)でAMDに勝てていないという事実である。

Intelのワッパが悪いのは、自社工場の製造プロセスが遅れているからだ」という長年の言い訳も、最新世代の登場によって完全に崩れ去った。その残酷な構造的理由を解説する。

12世代の錯覚と、ただの「爆熱化」に終わった13・14世代

Intelの電力効率がAMDに追いつきそうに見えた瞬間が一度だけある。第12世代(Alder Lake)の登場時だ。
Pコア(高性能コア)とEコア(高効率コア)を組み合わせたハイブリッド設計により、ベンチマークのスコアは飛躍的に向上した。しかし、マルチスレッドの厳密なワットパフォーマンス比較では、この時点でもAMDの「Zen 3」にはわずかに届いていなかった。

問題はその次である。第13世代・14世代において、Intelはアーキテクチャを根本から変えることなく、「とにかく電力を大量に流し込んでクロックを上げる」という力技でベンチマークのグラフを伸ばしにかかった。 結果として、ハイエンドモデルの消費電力は無制限設定で250W〜300W以上にまで跳ね上がった。ワットパフォーマンスの観点で見れば、当時の最新である「Zen 4」に完敗するのはもちろん、型落ちであるはずの「Zen 3」にすら劣るという大惨事を招いたのである。

Core Ultra 200Sが証明してしまった「設計の敗北」

そして満を持して登場した最新世代「Core Ultra 200S」。 Intelはついに自社工場での製造を諦め、中核となるコンピュートタイルにTSMCの最先端プロセス「N3B(3nmクラス)」を採用した。これは、ライバルのAMD「Zen 5」が採用しているTSMC 4nmよりも物理的に微細化が進んだ、つまり「本来なら省電力で有利なはず」のプロセスルールである。

しかし、結果はどうだったか。 製造プロセスでハンデをもらったにもかかわらず、純粋なマルチコア性能においてCore Ultra 200SはZen 5を圧倒できなかった。 例えば、レンダリングソフト「Cinebench R24」の比較では、Core Ultra 9 285K(24コア)とRyzen 9 9950X(3D)(16コア)は同等のスコアを出すが、その際の消費電力は285Kが240Wに張り付くのに対し、9950X3Dは190W程度で安定する。さらに、AVX命令を多用する厳しいストレステスト(Prime95)では、285Kは325Wまで電力を消費する場面もある。

これが意味する事実は重い。Intelがワットパフォーマンスで勝てない理由は「製造プロセスの遅れ」ではなく、「Pコアの根本的なアーキテクチャ設計そのものが、AMDのZenアーキテクチャに負けている」という事実が、皮肉にもライバルと同じ(あるいはそれ以上の)最新プロセスを採用したことで完全に露呈してしまったのである。

Eコアは健闘するも、Pコアが足を引っ張る構造

誤解のないように補足すると、Intelの設計がすべて劣っているわけではない。Core Ultra 200Sは、アイドル時や動画再生といった軽負荷時の消費電力を10W〜15W程度に抑え込むことには成功しており、新設計のEコアはマルチタスクにおいてメインの駆動力を担えるほど優秀である。

しかし、重い処理を担当するはずのPコアが構造的な弱点を抱えている。IntelのPコアは、極めて高いクロック(5.5GHz〜6.0GHz)と高電圧で駆動した際に真価を発揮するようにチューニングされているため、今回のように消費電力を意図的に抑え込もうとすると急激に性能が低下する。加えて、発熱と消費電力のトレードオフから、長年搭載してきた「ハイパースレッディング(HT)」までも廃止せざるを得なくなった。

結果として、CPU全体としてのワットパフォーマンスではZen 5の足元を脅かすレベルには到達していない。 さらにゲーム性能に至っては、キャッシュ構造に優れるAMDの「3D V-Cache(X3D)」シリーズに圧倒的な差をつけられている。例えば「Hitman 3」などのCPU負荷が高いゲームにおいて、X3Dは285Kを40%も引き離すフレームレートを叩き出しており、ゲーム時の平均消費電力でもAMDの方が圧倒的に低い。ゲームにおけるワットパフォーマンスの勝負はすでに「次元が違う」状態にある。

「前よりマシ」は「勝っている」と同義ではない

Core Ultra 200Sは、第13,14世代という「暖房器具」から見れば劇的な進化である。しかし、「自社の過去モデルよりマシになった」という事象と、「ライバルであるAMDに勝っている」という事象は、まったく別の問題である。

TSMC 3nmを使ってもなお、AMDに高負荷時のワットパフォーマンスで勝てず、ゲーム性能でも完敗している。この事実を前にして「Intelがついに反撃の狼煙を上げた」と評価するのは、あまりにもバイアスがかかりすぎていると言わざるを得ない。 我々消費者は、メーカーが謳う「省電力化」という言葉の裏にある、シリコンレベルでの本当の勝敗を冷静に見極める必要がある。

※最近発売された Core Ultra 200S Plus シリーズは、レイテンシが変わったくらいで高負荷時のワットパフォーマンスは変わらない。マーケティングに騙されないように注意してほしい。

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